Share

第69話 突然の遭遇戦

Author: 黒蓬
last update Last Updated: 2025-04-29 06:00:53

「いっっ!い、今のは?」

「あれは・・・シャドウウルス!?ここには危険な魔物は居ないはずじゃ?」

振り向いた先に居たのは真っ黒な熊の様な魔物だった。左右の手には鋭い刃のような鉤爪が付いている。先ほどはあれで攻撃されたのだろう。ハクシンさんから貰っていた斬撃耐性がなかったらもっと深手を負っていたかもしれない。

「アキツグさん、大丈夫ですか?」

「あぁ、傷はそこまでじゃなさそうだ。戦うのに支障はない」

「分かりました。私があいつの気を引きますからアキツグさんはサポートをお願いします。シャドウウルスは陰に潜む能力がありますから、気を付けて下さい」

「気を引くって、そっちこそ大丈夫なのか?さっきまでだって結構な数を倒してたのに」

「私これでもBランク冒険者ですよ?これくらいの危険は慣れてますから」

カサネさんは悪戯っぽい笑顔を浮かべてそう言うと、俺から離れてシャドウウルスに魔法を放ち始めた。シャドウウルスもカサネさんの方を脅威と判断したのだろう。俺からカサネさんの方に視線を移した。

森の中であるため火属性の魔法は使えない。カサネさんは氷や風の魔法をメインに攻撃しているが、シャドウウルスは体格に似合わない素早い動きで魔法を躱し、勢いのままにその鋭い鉤爪を振り下ろしてきた。

しかし、カサネさんもその動きは予想していたのか目の前に土の壁を生み出し、自身は横に飛びながらさらにシャドウウルスの側面に向けて氷の槍を撃ち出した。

シャドウウルスは片手を土の壁に埋めており素早い回避は不可能な状態だ。当たるかと思われた氷の槍は、しかしその背後の木に突き刺さった。

シャドウウルスが木の影に潜り氷の槍を躱したのである。本能的なものかもしれないが判断力も高いらしい。

その後、俺も隙を見て魔銃で援護をしようと試みてはいたのだが、まだ扱いに不慣れなのを差し引いてもシャドウウルスの素早さと影潜りの能力の高さにその悉くが躱されていた。

カサネさんもそんなシャドウウルスを相手に魔法を巧みに操って攻防を繰り広げているのだが、流石に身体能力の面ではシャドウウルスが有利な上に俺達は先ほどまでも別の魔物を倒していて疲労が残っている。少しずつだが押され始めていた
Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • 人生の続きは異世界で~交換スキルの代償は金銭NG!?~   第122話 メイル大森林

    翌朝から再びフォレストサイドへ旅を続け、三日程度で到着した。 道中魔物や獣との戦闘が幾度かあったが、カランダルさんもやはり強かった。 Aランク冒険者は伊達ではないということだ。 ちなみに、俺もこちらの大陸で戦っている間に能力のレベルがいくつか上がっていた。少し前まで交換で他人から貰ったスキルは成長しないのか?と考えて不安になっていた時期もあったので一安心だ。 今の能力はこのようになっている。-------------------------------- 魔法:ライトニングLv4、ディグLv2、ライトLv4スキル:斬撃耐性Lv2、罠察知Lv5、罠外しLv4、索敵Lv2、スラッシュLv2 --------------------------------スラッシュは試してみたことはあるのだが、流石に魔銃で発動させることはできなかった。魔銃がメインの現状だと上げるのは難しいと思っている。 罠察知、罠外しは元々のレベルが高かった上にダンジョンでないと使用する機会がほとんどないため、これもしばらくはそのままだろう。街に入り、ヤミネラさんの鍛冶屋の前までやってくるとカランダルさんが鍵を開けて扉を開けてくれた。「あ~やっぱりですか。これじゃお客さんが来てもろくに商品を見ることもできないじゃないですか・・・」店の中は以前見た時とほとんど変わりなかった。 カランダルさんは身近なところから整理し始めていた。「あ、店内を好きに見て貰って気に入ったものがあれば教えて下さい。よほどのものでなければ黒真鉄の代金内に収まると思いますから」そう言いながら整理の作業に戻っていった。勝手にあんなに動かしたら怒られそうな気がしたのだが、止めても無駄だろうなと思い口にするのは止めておいた。 その後店内を二人で見て回り、カサネさんは小型のクロスボウと矢を、俺はいくつかの属性ナイフを選んだ。 カサネさんは元々複数属性を扱えるため遠距離物理攻撃手段の確保、俺は近距離で相性の良い攻撃手段の確保という訳だ。 カランダルさんに見て貰い問題ないということで、

  • 人生の続きは異世界で~交換スキルの代償は金銭NG!?~   第121話 カランダルの懸念

    日も暮れて野営の準備を始めた頃、ようやくカランダルさんが目を覚まして起きてきた。「ふわぁ・・・もう夜なんですね。だいぶ眠ってしまいましたか」 「おはようございます。って言って良いのか時間的には困りますけど、ゆっくり休めましたか?」 「えぇ。お蔭さまでだいぶすっきりしました。あ、野営の準備手伝います」 「いえ、起きたばかりですしもう少しゆっくりしていて下さい。準備ももうすぐ終わりますから」 「そうですか?では、お言葉に甘えさせて頂きますか」そういうとカランダルさんは近くに腰かけてのんびりと空を見上げた。 今日は満月だ。柔らかな明かりで照らされ周囲も比較的明るい。「あ、起きられたんですね。おはようございます」そこに薪拾いに行っていたカサネさんが戻ってきた。「えぇ、ゆっくり休ませて頂きました。そういえば装備の方は試されましたか? できれば感触など聞いておきたいのですが」職人としては自分の仕事の成果は気になるものなのだろう。 俺達は昼間の戦闘で感じたことをカランダルさんに伝えた。「そうですか。ちゃんとお役に立てたようで何よりです。明日からは私も勘を取り戻すためにも戦闘に参加しますね。まぁ向こうに着くころにはコクテンシンの件は終わっていそうですけれど」 「そういえばカランダルさん達はAランクパーティなんですよね?ハクシンさんは戦っているところを見せて貰ったことがあるんですけど、ヤミネラさんとカランダルさんはどんな戦闘スタイルなんですか?」 「ヤミネラはクロスボウを使ったサポートタイプだね。流石にスキルまで勝手には話せないけど、それも含めてと考えて貰えばいいよ。私はカサネさんと同じ魔導士だよ。主に火属性と闇属性を得意としてる」前衛一人、中衛一人、後衛一人って感じか。三人パーティとしてはバランスがよさそうだ。「以前にコクテンシンと戦った時にはもう一人、回復や補助を得意とするメンバーが居たんだけどね・・・その時の怪我がもとで引退してしまったんだ。 時々手紙でやり取りする限りでは、今は地元で元気にしているみたいだけどね」カ

  • 人生の続きは異世界で~交換スキルの代償は金銭NG!?~   第120話 新しい装備のお披露目

    カランダルさんの作業完了までの数日間は冒険者ギルドで簡単なクエストを受けたり、例の広場でフリーマーケットに参加したりして過ごした。 そして、四日後にカランダルさんから特性付与が終わったと連絡が来たので、俺達は早速カランダルさんの鍛冶屋にやってきた。「いらっしゃい。早速来てくれたんだね。楽しみにしてくれていたようでこっちも嬉しいよ」 「もちろんです。出来上がるのを心待ちにしていましたから」 「防具までお願いしてしまったのにかなり早かったですね」 「あぁ、黒切を仕上げたことで何か閃きを得たような感じでね。自分でも驚くくらいスムーズに特性付与が進められたんだ。調子に乗ってしまったおかげで少し寝不足だけど」そういうカランダルさんはよく見ると目の下にうっすらと隈ができていた。 しかし、その表情は満足げだ。「俺達の為に、そこまでして頂いてすみません」 「いやいや、こっちも楽しくなってしまって勝手にやったようなものだか気にしないで下さい。さて、お待ちかねの品はこちらになります。どうぞ」そうして後ろの棚から俺達の武器、防具をカウンターに並べた。 俺は早速久しぶりの魔銃を手に取ってみる。「・・・ん~?持っただけだとあんまり違いは分からないですね」 「前にも言ったけれど能力向上は補助程度だからね。流石に持っただけで実感するほどの効果を得るのは難しいよ。走ったり、敵と戦ってみれば感覚の違いが分かるんじゃないかな」なるほど。言われてみればその通りだ。 隣を見るとカサネさんは水の玉をいくつか浮かべて効果を確認していた。 俺も試してみたいところだけど、ライトは迷惑になりそうだしな。あとの楽しみにとっておこう。「カランダルさん、本当にありがとうございました」 「ありがとうございました」 「お役に立てて何よりだよ。それでだけど、一つ、いや二つお願いがあるんだけど良ければ聞いてくれるかな?」 「なんでしょうか?」 「とりあえずはこの後ヤミネラの店まで行くことになると思うんだけど、その後できれば君達にもサムール村まで来て欲しい、というより馬車に僕も

  • 人生の続きは異世界で~交換スキルの代償は金銭NG!?~   第119話 特性付与の注文伺い

    「さて、特性付与について君達からご希望はあるかな?」 「いえその、まず特性付与でどんなことができるかも分かってなくて」 「なるほど。そういえばそうか。では、まずはそこから話そうか」 「すみませんがお願いします」 「といっても、難しい話はしないから気楽に聞いてくれれば良いよ。 特性付与っていうのは名前の通り武器に特有の性質を持たせることだ。 武器種によって相性や無意味になるものもあるけど、それは気になるものがあれば個々に説明しよう。今、私ができるのはこのくらいだね」そう言うとカランダルさんはカウンターの下から数枚の紙束を取り出して、 それを俺達の前に広げた。-------------------- 特性付与一覧表 ・威力強化(小、中、大) ・種族特攻(獣、鬼、竜、・・・)    ※特化特性 ・武器破壊              ※特化特性 ・弾速強化 ・射程強化 ・魔力消費軽減(小、中、大) ・重量変化(軽、重) ・耐久性強化 ・耐性強化(斬撃、刺突、投射、・・・) ※特化特性 ・特殊耐性(毒、麻痺、火傷、・・・)  ※特化特性 ・能力向上(力、魔、速、・・・) --------------------なるほど。この弾速強化や射程強化っていうのは、遠距離武器用なんだろうな ・・・いや、ゴブリンロードの剣のように衝撃波を放つことができるものの場合、それも対象になるんだろうか?・・・今持っているわけじゃないし、そこは気にしなくてもいいか。 他に気になるのは・・・「この特化特性っていうのは?」 「属性付与と似たようなものだよ。例えば獣特攻を付与した場合、それ以外の種族には威力が下がってしまう。武器の性質をその種族に対して相性が良いものに変化させてしまうからね。耐性系も同じように考えて貰えばいい」そういうことか。であれば候補からは外していいかな。俺達は特定の相手と戦うわけじゃないし、汎用性の方が重要だろう。 そうなると分かり易いのは威力強化だろうか?

  • 人生の続きは異世界で~交換スキルの代償は金銭NG!?~   第118話 黒切

    街まで戻ってきて衛兵にコゲンジを引き渡して事の次第を説明すると、衛兵達は急いで山中に向かっていった。あとで聞いたところによると、街への観光客が時々行方不明になる事件が起きていたらしい。しかし、いつ居なくなったかは分からず、バーセルドから帰る途中で魔物に襲われたのかもしれないということで調査は難航していたらしい。 ここは観光地で人の往来はかなり多い。そんな中で誰かが居なくなったとしてもどこで居なくなったのかを特定するのは難しいのだろう。「私がもっと早く気づいていれば・・・」 「あいつが本性を隠すのが上手かったってことだろう。少なくともカサネさんが責任を感じることじゃない」 「そう・・・ですね。アキツグさんありがとうございます」 「礼を言われるようなことじゃないけど、どういたしまして」 「いえ、今の話もですけど助けて頂きましたから」そう言ってカサネさんは丁寧に頭を下げた。 小屋でのことを言っているのはすぐに分かった。「それこそ仲間を助けるのなんて当たり前のことじゃないか」 『そうね。それにカサネの拘束を解いたのは私なんだけど?』 「も、もちろんロシェさんもです。ありがとうございます」 『冗談よ。それに私は一回失敗しているしね。あの時はごめんなさい』 「それはお互い様ですよ。まさか街中にあんな仕掛けがされてるなんて、私も思っても見ませんでした」確かに。人通りが少ないとはいえ街中で催眠ガスのトラップを仕掛けるなんて 大胆すぎる。地の利が向こうにあったからこそ先回りできたのだろう。 これは後日コゲンジ達を尋問して分かったことだが、やつらは眠らせたカサネさんを布袋に入れて擬装用の荷物と一緒に荷車であの小屋まで運んだらしい。 眠らせた後のことまでしっかり手はずを整えていた訳だ。 会ったのはその日の午前中だったというのに手際が良すぎる。恐らくは以前から同じような方法を使っていたのだろう。「骨休めするつもりがまたトラブルに巻き込まれてしまったな。でも、コゲンジも捕まって不安の種も解消されたし、今日は温泉に入ってゆっくり休もうか」 「そう

  • 人生の続きは異世界で~交換スキルの代償は金銭NG!?~   第117話 救出

    中に居るのは四人、外の一人を合わせて五人か。相手の強さは分からないが、少なくともコゲンジは冒険者という話だった。いくら気付かれずに近づけるといっても一人倒されれば相手も警戒するし、俺のことを感付かれてカサネさんを人質にされたら手が出せなくなる。どうする? 考え込んでいた俺にロシェが話しかけてきた。『アキツグ、敵の気を引いてくれる?その間に私が忍び込むわ』ロシェの案を聞いた俺は頷くと小屋の正面に戻ってきた。 そしてまずは、こちらに気づいていない見張りの男に正面からライトニングの魔弾を撃ち込んだ。「がっ!」男は撃たれたことに気づく間もなくドサッとその場に倒れた。 すかさず俺は影呼びの鈴を鳴らしゴブリンロードを呼び出すと、扉から突入して攻撃は控えめで敵の目を引き付けるように指示を出し、俺自身は窓から中が見えるところまで戻った。「おい、何か・・・え?な、なんだこいつ!?」 「魔物の襲撃?だが、こんなやつ見たことないぞ!?」外の様子を確認に来た男がゴブリンロードに気づいたらしい。そのタイミングで俺は窓から見える男達に向かって残りの弾を連射した。 魔弾は「ガシャンッ!」という派手な音と共に窓ガラスを突き破り、男の一人には当たったが、コゲンジには咄嗟に回避された。「裏にもいるぞ!いったい何なんだ!?」突然のことに慌てながらも、残った男たちは物陰に隠れた。 俺は男達へけん制しながら、時折なるべく派手な音を立てるように残ったガラス窓を撃って、相手の注意を正面と窓側に引きつけるようにした。 そうして少しの間膠着状態が続いたところで、ゴブリンロードと対していた男が驚きの声を上げる。「き、消えた!?」 『カサネ、今よ!』 「エアストーム!」 「!?」突如小屋の中で嵐が吹き荒れた。眠らせた上で口を塞ぎ手足まで縛っていたカサネのことは完全に警戒の外にあった男達は、小屋の中心で発生した嵐に対応できずになすすべもなく壁に叩きつけられた。「な、何故・・・?」いつの間にか猿轡や手足の拘束を解いて起き上がるカサ

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status